みんなの居場所

取材後記

2023年3月4日にオープンしたばかりの新しい飲食店さんを応援するための動画を…というご依頼を商工会さんから頂いたのが5月ごろ。

商工会の経営指導員さんと下見がてら食事に伺うと、なんとも居心地の良い空間と温かい雰囲気で、店内のどこを見てもエモさ満載。オーナーさんが作るスパイスカレーと、店長が地元食材を使ってつくるジェラートをいただきながら少しだけお話を伺うと、古い民家を1年半掛けて総勢50名以上の老若男女でDIYして出来上がったお店だそう。建具もテーブルも椅子も、床や壁のアートもみんなで仕上げた一つ一つが想いのこもった手づくり作品。店内に愛が溢れている、そんな印象でした。

後日オーナーさんのこだわりのスパイスカレーの仕込みを撮らせていただけるとのことで伺い、一段落ついたときにインタビューさせていただくと、下仁田町を知ってもらえたらと、野外音楽イベントを10年にわたり開催してきたオーナーご夫妻と仲間たちが、いつでも下仁田に訪れていただけるような場所がつくりたいという想いで作り上げたお店だったと聞き、事前取材の至らなさに反省するとともに、お二人と仲間たちの想いの延長線上でこの映像もつくらねば…と決意。

店長からぜひ撮って欲しいものが2つあるというリクエストがあり、一つ目はウクレレのユニットを組んだ人たちが夕方から毎週木曜日に飲みながら練習してるとのことで、追加取材に訪れたのが18時過ぎ、最初はカメラを回していたものの、結局自分もアコギを手にし翌1時まで盛り上がってしまうという有り様。

もう一つはマンスリーライブ。今回の出演は出たがりのガールズトリオだよ、ということでうかがってみると老若男女が大盛り上がり。演者もお客もスタッフも一体となり、音楽と笑い声、楽しい会話が溢れ出す、みんながつくりたかった場所そのものを感じ撮るのは容易でした。

スパイスカレーとジェラートのお店という以前に、この町にはどんな場所が必要で、何を実現したかったのか。映像の中から感じ取っていただければ幸いです。

思いがけず「1日1日を生ききる大人の生き様」を感じる取材となりました。本業の夜勤明けにスパイスカレーをつくり、子どもたちがギターを弾く傍らで眠りに落ちるオーナーの姿は、これからの自分にとっても糧となる忘れられないシーンです。

ヘアーデザインPEARL おもしろすぎる美容室

おもしろすぎる美容室

群馬県伊勢崎市赤堀鹿島町に、口コミのみで評判の広がる美容室がある。
スタイリストとしての腕や、着付け技術の評判はもちろんだが、常連客がもっとも評価するこの美容室の魅力は、全く別のものだった。

PEARLのお客さんは、老若男女様々…3世代に渡って利用されるご家族も多いが、津久井は「美容師とは女優よ!」と言う。
家庭や仕事上の愚痴、様々な年代での恋愛相談などを聞き入れ、友達や家族を演じ、自らも面白い話題を提供し、会話を広げていく。

心の壁を取り払うことがとても上手い。

津久井のスタイリングによって変身する喜びと同様、この会話の時間が何より楽しい体験になっている。

結果、見た目も心もリフレッシュして送り出される。

私も取材最終日、3回目の予約をした。もう常連さんの仲間入り確定である。

母と息子のお菓子なカフェ

群馬県伊勢崎市三室町に、健康志向の優しい食事を提供するCeres Cafeがある。
4年ほど前、県内外でパティシエの修行をした息子が戻ってきたことで、オリジナリティあふれる唯一無二の飲食店になった。
母子の間で約束がかわされていたがどうかまでは訊かなかったが、母にはそうなることが分かっていた様である。

母が追求するのは、身体に良いものを提供し、お客様に健康になってほしいという、まさに母心。
息子が追求するのは、食べるものに喜びを与えるスイーツを軸にした、さらなる広がりと可能性。

そんな二人が、他社とのコラボレーションや、地域イベントへ積極的に参加を始めた。

狭い店内で頻繁に接触事故を起こしていた2つの個性が掛け算となり、誰も想像できなかった何か大きな事が起こるのではないか?

取材を重ねることで、そんなワクワクが膨らんでしまい、動画完成後も、定期的に通っていく事になりそうである。

にぎわい繋ぐ洋食屋さん

下仁田町で最古の洋食屋”日昇軒(にっしょうけん)”は、コロナ禍を経てなお一層地域の人々とのつながりを強固にしている。

 早朝から11時ごろまでは、近隣の工場や役所など、得意先のお弁当づくりと配送で忙しい。
お弁当やテイクアウトで、地元の産業を食で支え続けることも地域貢献の一つであるが、出来たてを食べていただくことは、調理人誰もが願う事だ。

四代目の北村健一郎が目指す店は、皆が集い笑い合い、お腹も心も満たされる、そんな賑やかな洋食店だ。そのルーツは修行先、そして父親にあった。

父の考案したバラエティセットは、ハンバーグやエビフライ、オムレツにポークソテーなど複数のメイン料理がワンプレートで楽しめる、いわば「大人のお子様ランチ」。60年以上前から不動の人気を誇る大人気メニューで、バラエティセットを目当てにランチに通う人が絶えない。

夜は定番メニューの他に、フレンチコースも提供する。その昔「スパゲッティミートソースにご飯がつくんですか?」と言われた町で、フレンチ技法が花を咲かせ、現在は舌の肥えた老若男女を唸らせている。軽井沢帰りの都会人や、予約で遠方から訪れる人も多い。

高齢化の進む地域において、様々な変化を伴いながら、自分らしい店づくりを追求してきた。そしてこの数年のコロナ禍も、立ち止まらずずっと走り続けている。しかし店の跡継ぎはいない。彼の一番の願いは、店を任せられる若い仲間の出現だ。「あと十年出来るかな?」と北村は言う。

百余年もの長きにわたり、地域の拠り所であり続けるこの賑やかな洋食店を、次の百年に繋ぐことが出来るのか。

少年のようなオヤジたちの挑戦

甘楽町福島にはかつて13もの瓦屋が存在した。近代化の流れで屋根瓦製造産業は下火となり、現在は組合員6社が、一般家庭の屋根リフォームを主業務として、瓦製造は日常的な業務ではなくなってしまった。

瓦屋に生まれた現組合理事の3人、シンイチ、タモツ、イサオは、それぞれの思いをぶつけ合いながら、そして楽しみながら、この産業のあり方を考えている。

2007年、近代化以前の窯「だるま窯」を復元、昔ながらの製造方法で、瓦・レンガづくりを行っている。一件時代に逆行していると思われるこの窯が、SDGs全盛の現世において、再び注目を集めている。

組合のアイコンとも言えるこのだるま窯は何故作られたのか。また窯とともに瓦文化を未来に残していく事ができるのか。

今も少年の様なオヤジたちが、その問いに挑戦し続けている。