にぎわい繋ぐ洋食屋さん

下仁田町で最古の洋食屋”日昇軒(にっしょうけん)”は、コロナ禍を経てなお一層地域の人々とのつながりを強固にしている。

 早朝から11時ごろまでは、近隣の工場や役所など、得意先のお弁当づくりと配送で忙しい。
お弁当やテイクアウトで、地元の産業を食で支え続けることも地域貢献の一つであるが、出来たてを食べていただくことは、調理人誰もが願う事だ。

四代目の北村健一郎が目指す店は、皆が集い笑い合い、お腹も心も満たされる、そんな賑やかな洋食店だ。そのルーツは修行先、そして父親にあった。

父の考案したバラエティセットは、ハンバーグやエビフライ、オムレツにポークソテーなど複数のメイン料理がワンプレートで楽しめる、いわば「大人のお子様ランチ」。60年以上前から不動の人気を誇る大人気メニューで、バラエティセットを目当てにランチに通う人が絶えない。

夜は定番メニューの他に、フレンチコースも提供する。その昔「スパゲッティミートソースにご飯がつくんですか?」と言われた町で、フレンチ技法が花を咲かせ、現在は舌の肥えた老若男女を唸らせている。軽井沢帰りの都会人や、予約で遠方から訪れる人も多い。

高齢化の進む地域において、様々な変化を伴いながら、自分らしい店づくりを追求してきた。そしてこの数年のコロナ禍も、立ち止まらずずっと走り続けている。しかし店の跡継ぎはいない。彼の一番の願いは、店を任せられる若い仲間の出現だ。「あと十年出来るかな?」と北村は言う。

百余年もの長きにわたり、地域の拠り所であり続けるこの賑やかな洋食店を、次の百年に繋ぐことが出来るのか。